景気が悪いとき、「もっと世の中にお金を増やせばいいんじゃないか?」と思ったことはありませんか?
実はこれは、経済学でも基本中の基本とされる考え方のひとつです。
社会に流れるお金の量が増えれば、人や企業が使えるお金が増える。
その結果、消費や投資が活発になって景気が良くなる――。
今回は、この仕組みをもう少し身近な感覚で説明してみます。
- お金が世の中に回ると、買い物や投資が増えて景気が良くなる
- お金が足りないと、みんな節約して経済の動きが鈍くなる
- 将来に不安があると、お金はあっても貯め込みがちで景気は良くならない
お金=経済の燃料
経済を動かすには燃料が必要です。その燃料が「お金」です。
世の中にお金がたくさんあれば、企業も家庭も安心してお金を使えるようになります。
- 企業は、新しい工場を建てたり人を雇ったりできる。
- 家庭は、住宅や車といった大きな買い物がしやすくなる。
こうして取引が増えれば、経済全体のエンジンが回り出す。
つまり「お金を増やせば景気が良くなる」というのは、燃料タンクを満タンにしてエンジンを動かすイメージに近いといえます。
需給曲線で見る「お金と景気」
経済全体を「需要」と「供給」の関係で図にすると、これも直感的に理解できます。
- 需要(買いたい気持ち) がどのくらいあるかを表す曲線(総需要曲線)。
- 供給(売りたい気持ち) を表す曲線(総供給曲線)。
需給曲線については、以前の記事でも解説しています。
お金の量が増えた場合
さて、世の中にお金が増えると、買いたい気持ち(需要)が強まります。
すると、需要の線が右に動きます。
横軸の実質GDPは増えていきます。つまり経済は成長していくのです。

お金の量が不十分な場合
お金の量が不十分だと消費に回せるお金の余裕がなくなり、買いたい気持ち(需要)は下がります。
すると、需要の線が左に動きます。
このとき、先ほどと同じように横軸を見ると実質GDPは減少しています。つまり、経済の成長が抑えられるのです。

お金が増えても効かないときがある
お金を増やすと景気が良くなり、逆に減ると景気の加熱を抑える働きがあることがわかりました。
ここまでの話は「基本形」ですが、現実にはお金を増やしても景気が動かないことがあります。
次のような状態を考えてみましょう。
- 将来に不安があったら?
- 近いうちに増税されるかもしれない
- 給料が下がるかもしれない
このような思考が社会で優勢になると、人々はお金を使わずに貯め込もうとします。
社会にお金が増えても「モノを買おう」という気持ちにならず、景気も回復しません。
例えるなら「今は燃料は十分にあるけれど、次はいつ給油できるかわからないからエンジンをかけられない」ようなものです。
まとめ
「お金を増やせば景気が良くなる」というのは、経済の基本的な仕組みです。
世の中にお金が流れ込めば、人々の「買いたい気持ち」が強まり、取引が活発になります。
その結果、企業は生産を増やし、人を雇い、景気は上向いていきます。
しかし、これはあくまで“基本形”。
現実には、人々が将来に不安を感じて「お金を使わず貯め込む」ことがあります。
こうした状況では、社会にお金があっても流れず、景気は回復しません。
つまり、景気を動かすには「お金の量」そのものに加えて、人々がお金を使う気持ちになるかどうか が大切なのです。